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【楽演祭Vol.2】トータス松本×藤巻亮太 講義全文公開

楽演祭Vol.2にゲストととして迎えたのはトータス松本さんと藤巻亮太さん。今回は、互いにウルフルズ、レミオロメンのバンド活動もあり、ソロ活動もされているというところもあり、「バンドとソロの違い」をテーマとしてお話していただく……、つもりではあったが、その話は多岐に渡り、それが逆に〝トータス松本〟、〝藤巻亮太〟というミュージシャンの個性について感じる講義となった。

――ちなみに、最初に、山梨と大阪って話をしていて、音楽と土地ってテーマもあるなと思って。
トータス:あぁ、あるでしょうね。
――しかも藤巻さん、主催フェスのMt.FUJIMAKIを先月やられて。ウルフルズはヤッサをもう10何年以上……。
トータス:18年。中3年休んだけど。
――これって単に自分たちがその街で育ったってことじゃなくて、活動してく中で音楽で街に恩返しするっていうか、そういう繋がりができてきてるんじゃないかな、って。
トータス::それね、だいぶ経ってからよ。
藤巻:最初そんなことなかったですけど。
トータス:若い頃っていうのは、そのぉ、大阪を出て、日本の中心の東京で勝負するんや、っていうので、何がどんなことがあっても大阪に帰るのだけは勘弁っていうか、そんな恥ずかしいことはできんから、何がなんでも頑張らなあかんって思ってんだけど、大阪の人からしたら、あぁ行ってもうた、みたいなね。寂しいなぁ、みたいな。で、テレビで全国区になっても大阪弁しゃべって僕ら大阪出身のウルフルズって言ってるけど、まぁ、拠点は東京にあってっていう。けどまぁ本人らはもう大阪帰る気ない。僕らもほんまに、大阪嫌いとかそういうことじゃなくて、ある種大阪に背を向けながらやってきたとこがあった。
――東京で一旗上げるってそういうことですもんね。
トータス:そうそうそう。すぐに大阪に、ごめんあかんかったわぁ、帰ってきてもうたぁ、っていうのプライドが許さへんから。けどね、10年以上やってくると、余裕ができてくるのか、なんかすごい関西が愛おしくなってくる、僕にしてみたら。もっともっと関西発信のことやってもええんちゃうかな、って。恩返しってほどのことはないけど。
――でもまぁ地元でお祭りがしたいというか。
トータス:郷土愛というのかなんなのか、妙な、自分でも抗いきれない気持ちになってきて。
――実際やってみて、よかったって感じだったんですか?
トータス:大阪はクセがあって、いいとこも悪いとこもあるから、好きなとこも嫌いなとこもあるけど、それも含めて自分を写す鏡やと思って見てますね。だから、やって良かったと思ってます。
――藤巻さんはMt.FUJIMAKIをまさに1回目を終えたばかり。ヤッサとは積み重ねは違うと思いますが、多分最初のモチベーションみたいなものは共通するところがあったのでは?
藤巻:まぁそうですね、なんだろうなぁ。山梨って帰りやすいんですよ、1時間くらいで車で帰れて、で、家に帰ると、父親とか兄弟とメシ食ったりしてて。ウチは農業ってのもあるんですけど、そういう話をするのもすごい楽しくなって。なんかほんとにね、60代なんですよ。平均年齢が多分ね。今、日本で農作物を作ってる人が。で、そういう人たちがどんどん引退していくと、畑が山にかえっていくんですよ。だからどんどん山になっちゃったので、作らないと。そんなの東京にいたら全然わからないけど、そうだよねぇ、っていうような話をしていく中で、ほんとに、田舎、ローカルはローカルのよさもあるけど大変なこともたくさんあるね、っていうのが話す中で結構リアルになってきて、特に山梨県っていうのは、あまり多くの方がライブに来てくれない県でもあって、音楽のライブもなかなかないんですけど、自分が山梨ともう一回コミットして、僕自身も地元のこと勉強したいなって思ったのと、やっぱ山梨にもっといい音楽を聴いてもらえる場所を作りたいなって。で、僕自身が勉強したものを、山梨の魅力だったりするものを、今度県外の人にも知ってもらうっていう、その場所を作れるっていうのは、なんかすごくいいんじゃないかなぁと思ったのが始まりですね。


――山梨って県名ですけど、甲府なのか大月なのか富士吉田なのか山中湖とか。そういう地名だったら、どこみたいなのはあるんですか? 山梨の音楽シーンを盛り上げるみたいな。
藤巻:わりとまだザックリしてますけど……。
トータス:山梨いかへんね。そういえば、佐賀、岐阜、三重もあまり行かない。
藤巻:そうなんですよ。
――ミュージシャンがツアーで行かない。
トータス:飛ばしがち。
――甲府でも、ホールなりライブハウスなりがあって、ツアーするミュージシャンが必ずそこはやるみたいな流れができたりして、それが地元のシーンが盛り上がったり?
藤巻:まぁでも、1年に1回くらい、ほんとにすごいいい音楽を聴いてもらえて、1日で聴いてもらえる場所があるのってすごい素敵だなぁって思ったんですよね。
――自分なりのやり方で、そういうふうに、音楽を面白いぞっていう人を増やしたいと。
藤巻:県内の人にはそういう時間、なかなか東京までライブ見にいって帰ってくるとか、千葉までいくとか大変なんで、やっぱ地元でできたら言いなぁって思いがありましたね。
――これは来年以降も?
藤巻:頑張ってやれたらいいなと思ってますね。
トータス:ぶっちゃけここ数年の日本の夏の気候考えたら、屋外はもう恐いよな。
藤巻:恐いですね。
トータス:どうしたらいいんやろう、ほんとに。無理になりつつあるもん。
――各地の公園にドームとか屋根を作ってほしいですよね。
トータス:ほんとに。こないだの僕らの大阪のヤッサにしたって、今回は台風の影響で沖縄の人でチケット買ってるけど、肝心の飛行機が飛ばなくなって来れなくなった。そういう人に対してね、チケットを払い戻したほうがいいでしょうか。
――どっちだろう。
トータス:だってその人の都合で来れなくなったんじゃないもんね。
――そうですよね。交通機関ですもんね。
トータス:そうそう。そういうことが起こるじゃないですか。誰も幸せじゃないですよね。やっぱりどっかやり方を変えていかんと、Mt.FUJIMAKIも。山中湖はいいとこやけどね。
藤巻:ロケーションは素晴らしい場所なんですけど。
――音楽と土地っていうところで、僕持論があって、その土地のライブハウスとレコードショップとラジオ局ってでかいと思ってるんですね。例えば大阪ならFM802があって、ミナミ周辺にライブハウスがたくさん拠点がある。ミナミホイールってそれをサーキットするような、ま、あれはライブハウスだから雨でも大丈夫だし。で、山梨ならFM FUJIですよね。で、ライブハウスの文化ってあんまり甲府とかにはないかもしれない?
藤巻:そうですね、車で行かなきゃいけないみたいなとこですよね。
――けど、隣の長野県の松本には結構そういうのがあって。DJスリーパーって人がカワラレコードってのをやってるんですけど、リンゴ音楽祭ってのを主催していて、地元のフェスみたいな。そういうふうに、結構地場でがんばってる、特にラジオ局の人とかといろいろ手を組んで盛り上がっていくっていうのは、音楽と土地っていう意味では、次の世代の……。
トータス:で、レコードショップ。
――レコードショップも、たいがいあれですよね、えっと、だから、トータスさんがメンバーと出会った喫茶店みたいな、たまり場みたいなものがあると結構でかい。って思ったりします。
トータス:あぁ。今の人もそういうところに溜まったりすんのかね? 昔はそういう場所が結構あって、そこ行ったらサブカルの人がぶわーっていた、みたいな。
藤巻:今どうなんですかね? スマホなのかな?
トータス:それも大事やけど、フェスな、ほんま、ヤッサの来年、またハラハラするのかなと思って、台風。
藤巻:そうなんですよね。
トータス:お客さんも、演者の俺らも、仕込みするほうも、まぁ学生やからコンサート制作やる人もいるんでしょ? だからほんとにめちゃくちゃお金がかかるじゃないですか。まぁ細かいことまでは僕ら知らされてないけど、それが中止になるか延期になるか開催されるか、保険がかかってるとはいえ、なるじゃないですか。もっとみんながこう、落ち着いてその日を迎えられるようなふうになったらええんやけど。
――なったらいいですけど、天気ですからねぇ。
トータス:野外はやばいよ。8月に野外はやめようぜ。もう俺らも年寄りやからしんどい。
――フェスだけじゃない、新しいスタイルのイベントの試みでもある、この「楽演祭」だって。
藤巻:たしかにそうですね。
トータス:聞いといてほしい、あの人があんなこと言ってたなぁって。違う方法論思いついたら、ねぇ、それが一番素晴らしい。


アーティストがスタッフに求めるもの

――最後に、学生さんからの質問で、アーティストおふたりが、マネージャーやコンサートプロモーター、A&R、そういった側に求めるものは? つまり、アーティストがスタッフに求めるもの。
藤巻:なんでしょうねぇ。最近、禅ってあるじゃないですか、それを勉強しててすごくいいなと思ったんですけど、禅って、道場に入ると、誰も先輩が教えてくれないんですって。だから、まず入った日にいきなり、「行け!」って言われるんですけど、どこに行ったらいいかわからないしオロオロしてると、「バカ野郎はやく行け!」って言われて、とりあえず先輩の見様見真似で、「あっ掃除なんだ」って言って掃除に行って、箒を持つと、「バカ野郎ちりとりだろ!」って言われて。要は、何も教えてくれないからひたすらパニックになるんですって。でも、それで辞めちゃう人も。まぁ、そこで入る覚悟の人は辞めないでしょうけど、結局なにが起きるかっていうと、教えてもらうのと学びにいくのって全然違って、そこで、その禅寺で1年間いるとだいたい分かってくるんですって。自分が何をしなきゃいけなくて、何を求められてて、この人にはこういうふうに言ったほうがよくて、ここはこういうふうに出しゃばらないほうがいいな、とか。要は、自分っていう人間が本来持ってるアンテナが、びゅーって立ってくるんですって。それって、この世界で同じように大事なような気がしていて。要はね、プライオリティ、優先順位とかあるじゃないですか。そういうのがどんどん変わっていくんですよね。ライブ前にね。そういうのも、感じたりとかするのも誰かが途中から教えてくれないので、そういう感覚を磨いていくっていうのは、すごい大事なんじゃないかなと思いました。
――トータスさんはどうですか?
トータス:僕はやっぱり、スタッフに求めるものとしては、ビジョンとか、イメージとか、アイデアとか、そういうのが欲しいね。
――刺激になってほしい?
トータス:無邪気なのでいいと思うんですね。「テレビ番組の『バイキング』でコメンテーターやりませんか?」とかね。
――(笑)。
トータス:「え? 何を狙ってんの?」みたいな。「いや、もっともっとああいうところで顔を売って気のきいたコメントを言ったほうが今後のウルフルズにつながると思います」ってね。「何をトンチンカンなこと言ってんねん!」みたいな。それでもいいから、スタッフなりの、〝トータス松本を私はこういうふうにしたい〟〝こういう感じになったら面白いと思う〟、みたいなアイデアとかビジョンとかがあるほうが話が弾む。だいたいミーティングになるとプリント配って、今後1年くらいの、1年半先、2年先のなんとなくのスケジュールを報告しあって、1時間くらい話したら、はいそれでは頑張っていきましょう、って終了して、帰り車運転しながら悶々とするんですよ。で、「その先なにがあるんやろう?」みたいな。で、「その時、俺54歳になってるけど、その俺なにがあるんやろう?」ってね。 それやったら、「『バイキング』のコメンテーターを」って言ってくれるヤツの方が面白い(笑)。
――(笑)。
トータス:喧嘩になるかもしれんけど、なんかそういうイメージみたいなものがあるスタッフがいたら楽しいなと思う。
――確かにそうですね。
~キーン、コーン、カーン、コーン~
――あっ。ちょうどチャイムが鳴りましたね。トータス松本さん、藤巻亮太さん、ありがとうございました!