YAMA-KAN(山崎まさよし×KAN)楽演祭 Vol.4レポート
別冊カドカワ(KADOKAWA)×昭和音楽大学×ACPC(コンサートプロモーターズ協会)による、“音楽の楽しさ”を体感できるライブ・イベント「楽演祭」。4回目の開催となる今回は、KANと山崎まさよしがタッグを組んだスペシャル・ユニット「YAMA-KAN」が出演した。
普段聞くことのできない話題が詰まった90分の講義
別冊カドカワ(KADOKAWA)×昭和音楽大学×ACPC(コンサートプロモーターズ協会)による、“音楽の楽しさ”を体感できるライブ・イベント「楽演祭」。4回目の開催となる今回は、KANと山崎まさよしがタッグを組んだスペシャル・ユニット「YAMA-KAN」が出演した。
ライブに先駆けて行われたのは、2人の特別授業。YAMA-KANの楽曲「記憶にございません」がどのように制作されたのかを、実際に2人が交わしたメールや貴重なデモ音源をもとに紐解いていったほか、山崎は自身が主演および音楽を担当した映画『影踏み』の劇伴制作について、KANはオーケストレーションのアレンジ法について、それぞれの譜面を見ながら解説。プロのミュージシャンとして豊富な経験を持つ2人による、普段なかなか聞くことのできない話題が詰まった90分の講義に、集まった同大学の学生たちは熱心に耳を傾けていた。
「奇跡の再結成」にふさわしいスペシャルな一夜
そして、同日夜にはテアトロ・ジーリオ・ショウワにてYAMA-KANのライブ公演が開催された。彼らがYAMA-KANとしてライブを行うのは、2018年3月に2人の書き下ろしによる3曲入りの“超ミニアルバム”『Take me Follow me/記憶にございません/手をつなぎたいな』をリリース後、各地のイベントに出演して以来、およそ1年半ぶりとのこと。この日は、KANと山崎曰く「奇跡の再結成」にふさわしいスペシャルな一夜となった。
また、お互い洋楽への造詣も深いことから、洋楽のカバーも行うことにした2人。ギルバート・オサリヴァンの「Alone Again」を提案する山崎に対し、エルトン・ジョンの「Your Song」を推すKAN。ここで再び「最初は“平井堅”」方式でじゃんけんを行うことに。結果、今回も勝利したKANだったが「(山崎に)譲ります」と言って「Alone Again」に決定。……したはずが、2人の「Alone Again」の演奏に合わせて、最初の歌唱を担当するKANが歌ったのは「Your Song」。これには観客はもちろん、山崎も「よくそんな器用なことができますね」と思わず感心する一幕も。気を取り直し、今度は山崎が先に歌う形で無事に「Alone Again」が披露された。
その後、ギターの佐橋佳幸を迎えて山崎の楽曲「セロリ」を演奏。さらにドラムの河村“カースケ”智康、ベースの鹿島達也も加わっての「牛乳のんでギュー」(KAN)や「Let’s Form a R&R Band」(山崎)など、バンドサウンドによるグルーヴ感溢れるパフォーマンスに、客席からも自然と手拍子が沸き起こった。
「いい感じに温まってきたところで、YAMA-KANのオリジナルをやりますか」というKANの言葉を合図に、曲の準備に入った2人。しかし、ここまでの2人のやりとりから大方の人が予想した通り、一筋縄ではいかない。当初は「Take me Follow me」を予定したらしいのだが、山崎がループマシンで録ったパンデイロ(タンバリン)のテンポが「速すぎる」ということでKANが却下。さらに、山崎がループマシンを逆回転再生したところから、話題はライブから一気に脱線。20数年前からラジオで「人生逆回転」コーナーをやっているというKANの“逆回転の専門家”スイッチが入り、「ちょっとやっていい?」と言ってループマシンに向かって何やら一生懸命に歌い出す。そのフレーズからは何を歌っているのかさっぱりわからなかったが、山崎が逆回転再生させると、会場に響いたのは「大きな古時計」。しかも、<おじいさんの とけい>の<い>の部分では、山崎も「平井(堅)くんみたい」と称する絶妙なビブラートが効いている芸達者ぶりに、会場は笑いと驚きと賞賛に包まれた。
YAMA-KANの真骨頂とも言える心地良さで包まれた会場
ライブも終盤に差し掛かり、ここからさらに2人はギアを上げていく。KANが事前に「一緒に歌ってください」と呼び掛けた自身の楽曲「よければ一緒に」では観客の大合唱が響いた。それに気を良くしたのか、途中で弾いていたピアノを離れて、観客の歌声に合わせ吉川晃司風のダンスを見せるお茶目な一面も。そんなKANに対し、続いて「星空ギター」を歌った山崎は、間奏部分でKANがピアノで弾いた「君といつまでも」のメロディに合わせて「幸せだなぁ。僕は“昭和音大”にいるときが一番幸せなんだ。……って言っても今日初めて来たんだけど(笑)。死ぬまで君を離さないぞ!」と観客に語りかけるなど、最後までユーモアを忘れない。もちろん演奏面におちても、山崎が見事なギターソロで観客を魅了すれば、KANも続く名曲「愛は勝つ」で力強い歌声を披露し喝采を浴びた。
そして、本編を最後を締めくくったのは、中盤で断念していた「Take me Follow me」。今回はパンデイロのテンポ録りも成功し、無事に演奏がスタート。この曲の特徴でもある“追っかけコーラス”では観客も参加し、まさに大団円の締めくくりとなった。
観客の爆笑を誘う自由すぎるトーク
アンコールでバンドメンバーとともに再び登場したKANと山崎は、「予期せぬアンコールありがとうございます(笑)」と挨拶したのち、しばしトークを展開。オリジナル曲の「手をつなぎたいんだ」の演奏のため、ピアノではなくギターを手にしたKANのインパクトあるビジュアルに対して、山崎が「リッケンバッカーを抱いた天使みたいな……。高見沢(俊彦)さんに勝てるのとちゃいます?」とツッコミを入れれば、KANも昨年山崎が映画『影踏み』で主演と音楽を務めたことに触れ、観客に向かって「みなさんもぜひ観に行ってくださいね……『持ってけ泥棒』(※映画の中で山崎は泥棒役を演じている)」と敢えてタイトルを間違うなど、自由すぎるトークで観客の爆笑を誘う。また、それぞれKANが30年以上、山崎が25年以上のキャリアを持っていることにも触れ、「こんなふざけた感じでもやれてます(笑)」と、将来音楽を生業にする人も多いであろう学生たちにエール(?)を送った。
「手をつなぎたいんだ」の演奏後はバンドメンバーを送り出し、KANのピアノ、山崎のギターのみで山崎の代表曲「One more time, One more chance」を歌い上げた2人。歌い終えると、「せーの」で揃ってループマシンに吹き込み、逆回転再生した「ありがとうございました」の声でステージ袖に去っていく2人に、観客からの惜しみない拍手が鳴り止まなかった。
YAMA-KAN4度目の再結成も決して遠い未来の話ではないかも
アンコールでバンドメンバーとともに再び登場したKANと山崎は、「予期せぬアンコールありがとうございます(笑)」と挨拶したのち、しばしトークを展開。オリジナル曲の「手をつなぎたいんだ」の演奏のため、ピアノではなくギターを手にしたKANのインパクトあるビジュアルに対して、山崎が「リッケンバッカーを抱いた天使みたいな……。高見沢(俊彦)さんに勝てるのとちゃいます?」とツッコミを入れれば、KANも昨年山崎が映画『影踏み』で主演と音楽を務めたことに触れ、観客に向かって「みなさんもぜひ観に行ってくださいね……『持ってけ泥棒』(※映画の中で山崎は泥棒役を演じている)」と敢えてタイトルを間違うなど、自由すぎるトークで観客の爆笑を誘う。また、それぞれKANが30年以上、山崎が25年以上のキャリアを持っていることにも触れ、「こんなふざけた感じでもやれてます(笑)」と、将来音楽を生業にする人も多いであろう学生たちにエール(?)を送った。
「手をつなぎたいんだ」の演奏後はバンドメンバーを送り出し、KANのピアノ、山崎のギターのみで山崎の代表曲「One more time, One more chance」を歌い上げた2人。歌い終えると、「せーの」で揃ってループマシンに吹き込み、逆回転再生した「ありがとうございました」の声でステージ袖に去っていく2人に、観客からの惜しみない拍手が鳴り止まなかった。
終演後、2人は揃って「楽しかった」と、この日の感想を口にした。特に山崎は「イベントなどのポイントで活動してパッと終わるのは惜しい気がしていた」と言い、久々の“再結成”となるこの日を楽しみにしていた様子。一方のKANも、「オリジナルを作っておいてよかったなと思いました。オリジナルがあるから、YAMA-KANって名乗れるので(笑)」と、改めてこのスペシャル・ユニットに対する想いを吐露した。
「楽演祭」というイベントは、ライブだけでなく、出演者による特別授業も含めたうえで一つのパッケージとなっているが、KANと山崎は授業のほうも楽しかったよう。なかでも、「医大と間違えた」という設定で白衣に聴診器という衣装にしたのがお気に入りだったようで、山崎がKANに「今度は消防士の格好でもしますか?」と提案するほど。こうした遊び心はライブ中にも数多く見られ、まさにエンターテインメントとして観客を楽しませてくれた両者は、そのコツを「経験」(KAN)、「場数」(山崎)と教えてくれた。
レコーディング、イベント出演に続き3度目の“再結成”を果たすと同時に、“涙の解散ライブ”となってしまった今回の「楽演祭」。けれども、「機会があれば」と話す2人が、YAMA-KAN4度目の再結成の決断を下すのも決して遠い未来の話ではないかもしれない。
【楽演祭 VOL.4 セットリスト】
1.世界で一番好きな人(KAN)
2.ツバメ(山崎まさよし)
3.カレーライス(KAN)
4.アローン・アゲイン(カバー/ギルバート・オサリバン)
5.セロリ(山崎まさよし)
6.記憶にございません(YAMA-KAN)
7.よければ一緒に(KAN)
8.星空ギター(山崎まさよし)
9.愛は勝つ(KAN)
10.Take me Follow me(YAMA-KAN)
【アンコール】
Ec1.手をつなぎたいんだ(YAMA-KAN)
Ec2.One more time,One more chance(山崎まさよし)