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【楽演祭】講義全文公開⑤

⑨ 真似をすることも創作の糧になる


柴:こうやって気になって知った音楽は、自身の音楽制作にどれくらいフィードバックや影響があったりするんでしょうか?

斉藤:僕はそのままというよりは、例えばドラムの音色はこんな風にしてみたいとかね。エンジニアと一緒にもうちょっとマイクこの辺なんじゃないのかとか、チューニングはこんなんじゃないかとか。でも、そういうことやってみるけど、やっぱり違うんだよね。でも、別に違っていていいんだよ。その人の真似するわけじゃないから。ただ元になってる、これ目指したいな、というのはあったりはするよね。
山内:そうですね……。楽器の距離感とか、部屋の大きさとか、っていう楽器の関係性とかのバランスとかは気になりますね。そういう感じで聴いて、参考にしたい、っていうのはあるんですけど、実際やろうと思ってもやっぱり難しいですからね。でも影響という意味では、されてないわけないですよね。あくまでも聴いてる音楽なんで。全然、違うかもしれないんですけど、僕、斉藤和義さんのツアーにギタリストとして参加して一緒に回らして頂いたことがあって。その時に、ほぼ毎回ライブでやっていた曲があって、その後自分のバンドに帰った時に、結構似たようなグルーブのギターリフが出来たことはあります。その気持ちが体に入ってたんでしょうね。そういうのと一緒かもしれない。
斉藤:ありがとうございます(笑)。でもなんか、こんな話の流れでいいかわかんないけど、世の中の曲って、ありとあらゆるところからの影響は受けてるだろうし、意識してなくても、入ったお店で流れて曲とかを一回聴いちゃったら、どっかに入っちゃってるものだと思うし。もちろん誰も聴いたことのない音楽を出来れば作りたいとか、そういう気持ちは諦めたくはないと思いながらも、もうそれは無理なんじゃないかな、と思うというところでもあって。でも、ビートルズのこの曲みたいな感じを作ってみようと思って、目指して作ったとしても、結局出来た曲が全然似てないことになっちゃったみたいな場合もあるんだよね。で、その誤差は自分の個性ってことにしようっていうか。だから何かまずは真似をしてみよう、みたいなのは、全然ありだと思っていて。その結果違うところに行き着いちゃったら、それでいいだろうし。そういう気持ちがずっとしてるんですけど。

柴:やっぱり今の若い子は、真似をするとか、何かを取り入れる、影響を受ける、っていうこと自体を怖がっているとか、避けてるようなところがあると思うんです。だから、それそのものになるのは確かに問題かもしれないけど、真似ること自体は創作の糧になるんだ、みたいなことを言っていた人がいて。

山内:うんうんうんうん。
斉藤:なんかそういうの言い出すと、どこまでがじゃあ個性になるんだ、という話になるよね。究極言っちゃうと、ギターの弦が6本だって決めたの俺じゃないし、ってなる。もうすでにそのルールや枠の中でやってるわけで。ピアノにしてもね。ドレミファソラシドって音階は決められてる。
山内:すごい枠の中ですよね。
斉藤:ね。昔はそのさらに、黒鍵と白鍵の間にさらにもう半音があったんでしょ? でも、ピアノが今みたいな音階に決められた時点で、その12音階に決めた人の真似してるわけなんだよ。
山内:本当に。赤ちゃんとかでもだいたい似た声になるじゃないですか。新幹線の中で聞こえてくると、「みんな似た声してるなー」って思うんですけど(笑)。でも、1人だけめっちゃ違う声だと、「おー! あいつは!」みたいなになるんでしょうかね。それはそれで誤差ぐらいの感じなんでしょうけどね。もしかしたら制限された中でどう遊ぶかっていうところで、遊び方に個性が出るのかもしれないですね。
斉藤:うん。

⑩ 学生からの質問


詩音:そうですね。じゃあ、お二人への質問と、斉藤さんへの質問、そして山内さんへの質問がきてるんですけど、お二人への共通の質問から。(匿名希望です)

「小さい頃夢見ていた自分のように、今なれていますか? 夢を叶えられていますか?」

斉藤:うん、そうですね、俺はそうかも。もう中学ぐらいからミュージシャンになりたいと思ってて。当時はギタリストになりたいと思ってましたけど。ミュージシャンになりたいっていうのはずっと、それ以外は考えたことがなかったので、そうなったんですけね。思い込みが激しかったから。曲5曲しかないけど、なんで俺に気づかないんだろう、ってずっと思ってたから(笑)。
山内:僕は小さい頃、スポーツが好きでサッカーやってたんですけど。そこから音楽を始めて、バンドでデビューしてやってきた中で、志村くんのことがあって、そこから自分が歌を歌う立場になって……。今思うと、小さい時思ってた未来と今はもう全然違いますけど、まぁいっかと思える未来にきてるなっていうのが、それはそれで叶ってるような気になってるんですけどね。全然勝手に叶ってるような気になってますけど。

詩音:ありがとうございます。あと、1人ずつにも質問がきていて。まず斉藤さんへの質問。

「とても斉藤さんの書く詞が好きです。言葉選びでこだわっていることがあれば教えてください」

斉藤:こだわっていること……えーと。あんまりそんな、難解な言葉は使いたくないというかなぁ……まぁ知らないだけでもあるんですけど(笑)。なるべくパッと聴いて、一回で意味がわかって情景が浮かんで、っていうのが一番だと思うので、そこは目指したいなとは思ってますね。聴いたら短編小説を読んだり、短編映画を観たぐらいの感覚になれるような歌詞にはしたいけどなぁって思ってますね。そうなってるかどうかは別として。気持ちとしてはそうやって書きますけどね。

詩音:では最後に山内さんへの質問です。

「中島愛さんに楽曲提供をした『サタデー・ナイト・クエスチョン』や、山田孝之さんとのコラボ楽曲『カンヌの休日』など、誰かと関わる楽曲制作と、バンド内で制作するものでは、何か違う心がけをしていますか?」

山内:やっぱり、自分で歌ったりとか演奏するものっていうのは、それでしかなかったりするんですけど、人の、例えばその人の声を想像してやるっていうのは、また違った楽しみがあって。やっぱりその人の声がどれだけ活きるか――声の帯域もそうですけど、そういうことを意識してやることはありますけど、今挙げていただいた2曲っていうのは、両方とも演奏は自分たちのバンドでやっているので、基本的にあんまり変わらなかったんですけど。あとは、2つともアニメのオープニングテーマやドラマのオープニングだったりするので、そこの内容とも絡んでくるところが違いですね。そこから考えていくということで……大変というか、めちゃめちゃ楽しいですね。そういうのもやっぱり楽しみながらやらせてもらってますけどね。

詩音:楽曲提供って、第3者の目から、ちょっと遠くから見れるじゃないですか。自分の曲を作る時に、自分もそうやって見たりはしないんですか?

山内:しようとは思うんですけど、なかなか出来ないんですよね……馬鹿だから(笑)。やろうと思うときはあるんですけどね、難しいところですね、そこは。

キ~ンコ~ン、カ~コ~ン、コ~ンキ~ン、カ~ンコ~ン

詩音:本当にたくさんいただいてるんですけど、チャイムが鳴ってしまいました。
柴:チャイムで終わるんですね。授業って感じがしますね、このチャイムでグッと(笑)。

山内:そうですね、僕が学生の立場なら、「もう鳴っただろ!」っていう、「鳴ってくれよ」って(笑)

柴:こんな形で授業を終わりたいと思います。

斉藤:授業だったんですね(笑)

柴:授業だったんです!(笑) これを授業と言い張るのが、今回の楽演祭です!
ではお二人に大きな拍手を!

次回はいよいよライブレポート! 3月2日に公開! お楽しみに!

撮影/コザイ リサ