【楽演祭】講義 全文公開①
2018年1月11日、午後1時、昭和音楽大学講義教室。この日が初めての別冊カドカワ・昭和音楽大学・A.C.P.C. 三社主催によるライブ・エディテイメント「楽演祭」が開催された。 第一部となる「学びの場」では、ミュージシャンの斉藤和義さんとフジファブリックの山内総一郎さんをお呼びし、「音楽のルーツ」をテーマに昭和音楽大学の受講生100名を前に1時間半ほどの授業を行った。 司会には音楽ジャーナリストの柴那典さんとシンガーソングライターの辻詩音さん。まずは斉藤さん・山内さんの登壇前に、二人による今回の取り組みに関しての紹介をしていただいた。
2018年1月11日、午後1時、昭和音楽大学講義教室。この日が初めての別冊カドカワ・昭和音楽大学・A.C.P.C. 三社主催によるライブ・エデュテインメント「楽演祭」が開催された。
第一部となる「学びの場」では、ミュージシャンの斉藤和義さんとフジファブリックの山内総一郎さんをお呼びし、「音楽のルーツ」をテーマに昭和音楽大学の受講生100名を前に1時間半ほどの授業を行った。
司会には音楽ジャーナリストの柴那典さんとシンガーソングライターの辻詩音さん。まずは斉藤さん・山内さんの登壇前に、二人による今回の取り組みに関しての紹介をしていただいた。
柴:今回の斉藤和義さん、山内総一郎さんのお二人をお招きしての「音楽のルーツ」の授業ですが、世代が違うということにポイントがあると思っています。
詩音:どれくらい違うんですか?
柴:斉藤和義さんが66年生まれ、山内さんが81年生まれ。
詩音:15歳違うんですね。
柴:今日受講されている方々は大学1、2年生が多いと聞いています。そうすると、だいたい18、19歳で生まれた年は97年とか98年とか。ちょうど斉藤さん、山内さん、お二人の歳の差と、今日受講されているみなさんと山内さんの歳の差が同じくらいなんですね。
授業テーマの「音楽のルーツ」ですが、どうしてもルーツというと、世代が違うとか、育った環境が違うとかで、全然音楽性が違うんじゃないかな、と皆さん思いがちなんです。でも、音楽のルーツって実は意外にそうじゃないということを、これからの話の中で感じていただけるとうれしいな、と思っています。
詩音:楽しみです。
柴:では早速お呼びしたいと思います。
詩音:それでは、お二人、どうぞ。
―斉藤和義さん、山内総一郎さん登場。受講者の100名の生徒たちを前に登場―
斉藤&山内:よろしくお願いします。
山内:これはドキドキですね。
斉藤:こういうことだったんですね。
柴:この後、ライブもやっていただきますが、まずは最初に授業もお願いしようかと。この教室で受講されている生徒さんは大学1、2年生で、18、19歳が中心です。山内さんがそのくらいの頃に、斉藤さんが今の山内さんくらいの歳だった。だいたい15歳差くらい。
山内:そうですね。
柴:(受講者たちの席を指し)山内さんがこの辺に座っていたころに、デビューしていたっていう。
斉藤:あぁ~。
山内:全然ピンときてないじゃないですか(笑)
柴:山内さんは斉藤さんの曲を聴いて育った年代ですか?
山内:そうですね。バリバリ影響を受けてたっていうか、カッコいい人がいるなと思って、ライブも行ってましたし、それこそ大学の学園祭に出演されてるのを学生の頃に見にいって、そこで斉藤さんがマーシャルっていうギターアンプ山積みにして、フライングVっていうVの形のギター持って3ピースでやってるの見てましたよ。知ってました?
斉藤:あぁ。知らないです(笑)。
詩音:(笑)初めて伝えたんですね。プロとして初めて会って、憧れの人と一緒にステージに立った時はどんな気持ちだったんですか?
山内:いやぁ……いてはるなぁと思って。最初、2005年に僕らのやってるフジファブリックのイベントに出演していただいて、そこからなんですけど、その打合せで初めてお会いさせていただいて、静かな人だなぁっていう第一印象あったんですけど。
斉藤:へぇ~。そういえば、みなさん18、19歳で、音大の方々ですよね? 音大の人たちって、みんなきっとクラシック系とかが主体なんですよね?
柴:いや、がっちりクラシックの人もいるけれども、ポピュラーミュージックとか、あとは、いわゆる音楽業界の仕組みを教える授業とかもあるらしくて、わりとガチガチのクラシックだけの生徒さんだけってわけでもないんですよ。
詩音:イベントスタッフになりたい方とか、アーティスト・マネジメント目指してる方とか、いろんな方がいらっしゃるみたいです。
斉藤:良かった~。クラシックの人たちだけなら、うちら誰だかわからないし、興味もないんじゃないかと思って。
山内:(音楽業界といえば)ちょうど教室の後ろにいるのが、僕と斉藤さんのスタッフの方とかいらっしゃるんですけど。あぁいう人たちになりたいって人がいるってことですね。
斉藤:あぁなりたいってことですね。
会場:(笑)。
① 音楽への初期衝動
柴:斉藤さんって18、19歳の頃はどんな感じだったんですか?
斉藤:バンドをずっとやっていたんですけどね。当時、学生で全然お金も無かったので持っていたギターや楽器をいろいろ売ったりするしかなくて。そしたらそれを見かねた友達がアコースティックギターを1本くれたんです。そこから、そのアコギを弾きながら歌も唄うようになって……。オリジナルを少しずつ作り始めたのがちょうど18、19歳くらいですかね。それまでも曲を作ったりはしてたんですけど、高校まではヘヴィメタバンドのギタリストだったんで……。「どうだ!」っていう速弾きをしていて、その間奏から曲を作るみたいな感じで(笑)。
山内:(笑)ギターソロから作るみたいな。
斉藤:そうそう。
柴:そういえば、お二人はシンガーソングライターでもありますが、ギタリストでもあるということにも共通点がありますよね。
山内:そうですね。
斉藤:うんうんうん。
詩音:二人ともギター愛がすごい。山内さんがギターを始めたのは18、19歳くらいからですか?
山内:僕は(ギターを)始めたのが14、15歳だったんで、そこからのめり込んでいった感じなんですけど……。その頃に抱いたギター愛的なものは、今もあんま変わってないところがあると思うんです。斉藤さんも変わってない気がするんですよ。今日は入り時間一緒だったんですけど、ずっとギターの話ばかりしていて。そうじゃない時は……。
斉藤:くだらない下ネタとかね(笑)。俺も12、13歳でギタ―始めて。で、弾けるようになってくるとグイグイ、ハマっていって。ギター弾くのも好きですけど、形とかもね。形とか色とかデザイン自体がすごく好きで。実は弾くよりそっちのほうがほんとは好きなんじゃないかって気がする時もありますけどね(笑)。(山内)総ちゃんとかは、ギターがあっという間に弾けるようになっちゃった感じでしょ?
山内:いや、でも、ずっと弾いてましたからね。トイレとかでも。学校にいる時は授業の間の休憩時間に何を弾こうかってのをずっと考えてましたね。
斉藤:学校の休み時間にも弾いてたんだ?
山内:弾いてました。
斉藤:へぇ。アホなんですね。
山内:アホですね(笑)。
②最初に音楽に興味を持つきっかけとなった曲
柴:「音楽に興味を持つきっかけとなった曲」ですが、挙げてもらったので意外だったのですが、山内さんの「サターンバレーのテーマ」。
山内:これ、ゲーム音楽なんですよね。
柴:(『MOTHER2 ギーグの逆襲』)の。
山内:そうですね、鈴木慶一さんの作曲なんです。ゲームが好きで、いろんなゲームやってたんですけど、ロールプレイング・ゲーム好きで。このゲームが出たのが僕が中学校の時で、近所のTSUTAYAにサウンドトラックを買いにいったんです。ゲーム音楽でもテーマ曲ってのがあるじゃないですか、メロディっていうか。それに歌詞を自分で書いてたんです。
斉藤:へぇ。
山内:歌詞書いて、CDデッキで流しながらテープレコーダーに、ちょっと恥ずかしいんですけど歌って録音していたというのが一番最初。
詩音:ゲームをしながらBGMを聴いていると頭の中で歌詞が出てくるんですか?
山内:これメチャメチャいいゲームなんですよ(笑)。本当に(ストーリーに)感動して、涙が出るくらい。僕、卒業式で泣いたことないんですけど、このゲームでは泣くっていうね(笑)。そんな感動したゲームなので気持ちを入れ込んで聴いていると、どうも言葉がハマるぞと思って。最初のうちは恥ずかしいから弟に唄わしたりしてたんですけど、弟も嫌そうだったんで、自分で唄うようになって……。
詩音:今でも歌詞は覚えてますか?
山内:いや、歌詞を書き残していれば良かったんですけど……。たぶん、当時のファミコンはゲームの途中で電源抜いたら、それまでのレベルアップしてきた記録が消えちゃったりするんですよ。その残念な気持ちを唄ってる歌だったような気がするなぁ。それか、運動場でずっと立っていると日射病になってしまとか……、そんな歌でしたね。当時独特の感性で(笑)。
柴:子供の頃は、鈴木慶一さんがどんなミュージシャンか知っていましたか?
山内:知らなかったですね。
柴:でも大人になってから、鈴木慶一さんだったんだ!って。
山内:そうです。
斉藤:ゲーム音楽って、俺らの世代だとインベーダーゲームとか、そういうのが流行ってて。あぁいう音楽って、それこそYMOってテクノのバンドの細野晴臣さんが、それまでゲーム用のBGM[としてしか聴かれてなかった音楽を、「これはすごい音楽だ」って言って、自分でインベーダーゲームの音をシンセサイザーでそっくりに作った曲とかを発表してんだよね。
山内:YMOの中でありますよね。
斉藤:そうそう、YMOの1stアルバムに、それこそ「コンピューター・ゲーム “サーカスのテーマ”」っていう曲がある。でも、ゲーム音楽を作ってる人たちはたぶんオモチャメーカーの職員の人だったりするんだよね。
山内:そうですよね
斉藤:だからミュージシャンのつもりはないけど音楽を作っちゃってた人がいて、それが結局テクノにもなってったっていう。そういう意味では発明家だよね。
山内:そうですね。今と違って音数も制限されてる中で作ってるから、センスがめちゃくちゃ問われるところですよね。
斉藤:ね。それを作曲家の人が、あれはすごいっと言って音楽として確立していくんだもんね。
※次回は2月19日アップ予定です。お楽しみに!
<司会者プロフィール>
柴 那典(しば・とものり)〇1976年神奈川県生まれ。音楽ジャーナリスト。ロッキング・オン社を経て独立、雑誌、ウェブなど各方面にて音楽やサブカルチャー分野を中心に幅広くインタビュー、記事執筆を手がける。主な執筆媒体は「AERA」「ナタリー」「CINRA」「MUSICA」「リアルサウンド」 「ミュージック・マガジン」「婦人公論」など 「cakes」と「フジテレビオンデマンド」にてダイ ノジ・大谷ノブ彦との対談「心のベストテン」連 載中。著書に『ヒットの崩壊』(講談社)『初音ミクはなぜ世界を変えたのか?』(太田出版)、 共著に『渋谷音楽図鑑』(太田出版)がある。 ブログ「日々の音色とことば」 http://shiba710.hateblo.jp/ Twitter:@shiba710
辻 詩音(つじ・しおん)〇シンガーソングライター。2008年11月メジャー・デビュー。15歳からギターを始め、幼少の頃から書き溜めた詩のストックはノート100冊以上。全国のテレビ・ラジオ46局でパワープレイ獲得(10代女性ソロ・アーティスト史上最高記録)。第2回レコ直♪新人杯グランプリ受賞。アニメ「BLEACH」や「ソウルイーター」などのエンディング、映画の主題歌などの楽曲もリリース。2017年夏、音楽旅プロジェクト「世界でいぇい」をクラウドファンディングCAMPFIREで始動。アジア6カ国を女一人旅しながら、世界のクリエイターとコラボするこの企画は、大成功を収めた。デビュー10周年の今年11月11日(日)、お台場Zepp Diver City Tokyoでワンマンライブが決定。
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