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【楽演祭Vol.2】トータス松本×藤巻亮太 講義全文公開

楽演祭Vol.2にゲストととして迎えたのはトータス松本さんと藤巻亮太さん。今回は、互いにウルフルズ、レミオロメンのバンド活動もあり、ソロ活動もされているというところもあり、「バンドとソロの違い」をテーマとしてお話していただく……、つもりではあったが、その話は多岐に渡り、それが逆に〝トータス松本〟、〝藤巻亮太〟というミュージシャンの個性について感じる講義となった。

バンドとソロ

――藤巻さんがトータスさんと話したいとおっしゃってた理由が、バンドとソロを両方やっている。これお二人の共通ですもんね。バンドスタートで始まっている。
藤巻:まぁそこの陰いろいろあるんですけど、例えば、みんなでいたの23、24、25歳くらいで、「粉雪」って曲があったんですけど、「粉雪」って曲が売れたんですよ。
トータス:それは神社で書いたの?
藤巻:神社で書いてないんです(笑)。その後なんですけど。だから、おこがましいですけどね、半分すごくラッキーだったし、ありがたいことに、神社時代くらいしか苦労してる時期がなくて。で、そこからは、まぁガムシャラでしたけど、割とすぐに。25歳ってみなさん社会人になりたてくらいのころですよね? その頃にブレイクさせてもらったんですけど、そこから先どうしようかな……っていう時期があり。2006、7、8、2010年ぐらいまでをそんな思いを抱いて過ごしてる時に、トータスさんが、2008年かな? 「涙をとどけて」、って曲でソロ活動されているのを聞いた時に、やっぱりウルフルズもすごい好きだったんですけど、その当時、ブレイクしたはいいんだけどその先どこに向かったらいいんだろうなぁ、って悩んでる時に、その曲が胸にグサッときたんですよね。
トータス:なるほどね。
藤巻:結局レミオロメンっていうのは2000年に結成して、ほぼ10年間くらいしかやってないんですけど、そこからソロ活動をすることになるんです。トータスさんにはやっぱり僕は影響を受けている。そこも含めてやっぱり今日っていうのがあったんですけど。トータスさんでいったら、25歳ってまだデビューされたくらいですか?
トータス:そう。したばっかりくらい。
――まだブレイクまでもうちょっとかかる?
トータス:全然かかるね。
――でも、そこまでの下積み、苦労の期間は違うと思うんですけど、1回売れて世の中にワーッと自分たちの存在が広まった後に、悩んでしまうのってやっぱりあったんでしょうか?
トータス:あったあった。もう家とかも、売れてから引っ越すからね。最初住んでた家の家財道具を新しい家に持っていったら、なんか全部が小っちゃくて、変なことになるね、あれ。
――あぁ。リアルな話、お金が入る、自分の身の丈が変わっちゃう。
トータス:そう。なんかスカスカなんよ。そのスカスカの様子を見てると、なんか恐いのね。自分の身の丈に合ってないようなところに自分がおるような。テレビもこんな小っちゃいし、それがでっかいリビングに置いてあって、めちゃ遠いなぁ、みたいな。そいつがまさに自分、みたいな感じなの。昨日までの自分やのに、俺だけがなんかこう勝手に偉くなっていってる気がしてるだけ、みたいな。だから引っ越してすぐに思ったね、いつでも四畳半に戻れるだけの心の準備はしておこうって。
――やっぱりあるんですね。20代で、もちろんでバンドで成功したいとは思ってるけど、急にきたブレイクの心の準備……。
トータス:なんかどういうものかわかってない。漠然と、売れたいと思ってて、その頃は世の中がCDがメチャメチャ売れてる時代だから、誰が100万枚、誰が200万枚だのやってた時に、そういうところに到達する枚数の数もあんまわかってないじゃないですか。200万枚っていったら日本の人口の何分の1くらいの数なんかな?とか。そんなことも考えたこともないから。
――100万人に会ったことなんかないですもんね。
トータス:ないからね。だからわかってないの、なんにも。で、現実にそれがバーンとなったときに、なんか、ただ恐いっていうか。電車乗ってめちゃジロジロ見られるとか。それがひたすら恐い。
――それは、1990年代前半にブレイクしてからずっと続いてた感じですか?
トータス:2年、3年くらいはもうフワフワフワフワ、なんかネガティブなことばっか考えてましたね。でも、曲を作りたい、いい曲を書きたい、で、周りの人が言う、「ガッツだぜ」の次やで、とか、さらなるヒットを、こういうのじゃなくて「ガッツだぜ」みたいな、とか。タイアップの発注がきて、どんな曲がいいですか?って聞くと、「ガッツだぜ」みたいなって。ラブソングを書いていただきたい、「バンザイ」みたいな、とかね。全部そうなってくるから。なんかもう、なんやねん! みたいな感じもあるけど、やっぱりそういうことも仕事としてするのもプロの一面やろうな、ってのもわかってるんですよ大人やからもう。けどそこで結構、悩んでやってましたかねぇ。

――なるほどなぁ。しばらくそういう時期が続いて、でもウルフルズが一回活動をストップしたのは、もうちょっと先のことですよね。それからソロを始められた。学生さんからの質問でも一番多かったのが、バンドをやっていてそこからソロをやろうと思ったのはどういうきっかけなんでしょうか?っていう。
トータス:なるほどね。どう?
藤巻:僕ですか? なんでしょうねぇ。おっしゃる通り20代が、なんていうんだろうなぁ、最初は自分から走り出したんですよ、こうやって。なんかやっぱり、最初、「売れたい!」とか、「みんなに聴いてほしい!」とか思って走り出すんですけど、なんか規模が大きくなると、走ってるのか、走らされてるのか、ちょっとわからなくなってきて。そのうち足がもつれてきて、そのスピードに追いつけなくなってくる自分もいて、ぐーっと自分がわからなくなる、みたいなことも僕は30歳くらいであって。
トータス:なるほど。
藤巻:そうなんです。僕25歳くらいだったので、30歳くらいでそういうのがきたときに、なんかほんとに悩んでる時って、もう何に悩んでるかもわからないっていうか。原因がわかんないんですよね。で、そういう時に、僕はきっかけは全然音楽じゃなくて登山だったんですけど(笑)。
トータス:へぇ。それ神社に戻るわけ? 神社時代に戻ればいいのに(笑)。
藤巻:そう! そっから登山時代に(笑)。
トータス:登山ねぇ。
藤巻:登山っていうほどでもないんですけど、登山家の野口健さんって方がいるんですよ。富士山登ったりとか、エベレストの清掃したりとかすごい方がいて、その方と仲良くなった時に、30歳で初めてヒマラヤにつれていってもらうんですよ。ヒマラヤ行ったことある人います?
トータス:さすがにいないな(笑)。
藤巻:エベレスト街道っていうのがあって、2週間くらい山を歩くんですよ。その時に初めて、30歳の時、物理的にすごい遠いとこに行って、初めて精神的にも、日本で音楽やってる自分が客観的に見えるようになって。あぁ俺いろんなことで悩んでるなぁ、って思って、自分自身が自分自身を縄で縛ってるような状態だってことに気づいて、この縄をほどきたいと思ったのが多分ソロ活動のきっかけでしたね。

――バンドっていうのが、神社時代みたいにみんなで集まってやれるからクリエイティブが進んだとこがあるけども、いつの間にか、成功を経て縛られるものになっていた。
トータス:動機は全然違う。俺はソロをやりたいと思って始めたわけじゃなくて、ソロやってみませんか?みたいな。レコード会社の人とか、ソロでもいいですよ、って向こうが。さっきの「涙をとどけて」って曲は、日テレの上戸彩ちゃんが新人弁護士のドラマ(『ホカベン』)のタイアップやったの。新人弁護士になって正義感に溢れて弁護士になったのいいが、内情を知ってみると結構いろいろなことがあって、〝自分の正義とはなんだ?〟みたいなのにブチ当たり……みたいな、最初そういうシノプシスもらって、あぁなんか最初の純粋な自分のこと思い出せばええんや、と思って。薄汚れたこの40過ぎの男が、純粋な自分のこと思い出せばええのや、と思って書いたんです。それも、ソロでもいいです、って向こうが言ってるって話だと思うんですよね。だったら、ちょっとドラマのテーマが暗かったから、ウルフルズって感じじゃないかもなぁ、と思って。これを機会にソロの曲を書いてみようかな、って。
――せっかくなんで、その「涙をとどけて」を聴いてみましょう。
トータス:聴くの? こんなとこで? ものすごい拷問のような(笑)。 
――これを作った時に、ウルフルズとはちょっと違うぞ、ソロででもできるぞ、っていう感じがあったんですか?
トータス:うーん、やってみたら、ウルフルズのパブリックイメージの明るいとか楽しいとか応援歌みたいな、そういうものと真逆のテーマでやりたいことが結構いっぱいあった。別に、俺は本当は暗い人間でね、とかそういうことが言いたいわけじゃないけど、なんか、明るいものと暗いものはある種表裏一体だから、自分の中にあるものを自然にやれる感じがして、曲がうわーっとできたんです。で、これでソロをやれるのか、って、ちょっと楽しくなってきた感じだったね。
――藤巻さんはこれを聴いて、今トータスさんがおっしゃったようにウルフルズってもののイメージが縛る縄だとしたら、これやっていいんだ、みたいな。
藤巻:だからそのウルフルズのイメージでいったら、ちょっともう少しパーソナルにも感じたし、例えばみんなが言ってるみたいなイメージに応えなきゃいけないであろうものじゃなくて、もう少しこう、それを担った男が書いてる歌、っていう感じがしたんですよね。
トータス:不思議なことに、ウルフルズで自分のやりたいことをやれてて、そんな明るい曲ばっかりじゃなかったりするんだけど、で、ちょっとウルフルズのメンバー4人にとってみたら、よし! 今度は新機軸! みたいなのが作れても、雑誌の人たちまでは褒めてくれるんだけど、一般には届かへんね。そこに何があるんやろう、っていうね。
――そこで一回先入観が固まって人たちには、「同じのください!」ってなっちゃうんですね。
トータス:なるんやろうね。雑誌のレビューでちゃんと褒めてくれてる、ちゃんと伝わってる、これはウルフルズのほんとに素晴らしい新作だ!って書いてあるけど、やったー!と思って嬉しなるけど、売れないみたいな。あれ? 届かなかった、みたいなね。あるよね。
――あります。そういう感じあります? 「粉雪」や「3月9日」が代表曲になって、そればかり求められるみたいな。
藤巻:だからなんかこう、もう、トータスさんもおっしゃってましたけど、それをもう一回書こうとすると、テクニックになっちゃう。
トータス:そうだね。
藤巻:ですよね。最初はね、作ろうと思って作ったわけでもないというか、出会っちゃった、みたいな感じのほうが近くて、出会っちゃったみたいな感覚に自分のマインドをしとくほうが大事なんじゃないかなぁと思ってたんで。
トータス:歌うの自分やしね、結局。
藤巻:そうなんですよねぇ。

――学生さんからの質問でも、バンドとソロの違いはどこにあるんですか?っていうのがとても多くて。
トータス:都市伝説っていうか、ほんとかどうか知らんけど、かの矢沢永吉さんがね、「俺はいいけど、矢沢はどうかな?」っていう有名な発言があって。あんまり自分が乗り気じゃない仕事の話がきた時に、「俺はいいけど、矢沢はどうかな?」って言うっていうね。これは言いえて妙で、例えば、ウルフルズのトータス松本って名前でやってるんやけど、本名は松本敦っていうんです。松本敦とトータス松本の境目というか開きが、「俺はいいけど、矢沢はどうかな?」って言うほど開いてないのよ俺は。わりと一緒なんです。
――あぁ。
トータス:だから、なにやっても松本敦がやってる感じでやってしまってるわけ。もっと早い段階でこれを切り離しておけば、もっと楽やったかもしれない。
――なるほど。
トータス:で、藤巻亮太と藤巻亮太は違うの?
藤巻:めっちゃ本名なんで(笑)。
トータス:銀行で困るやん、「藤巻さま~」。
藤巻:まぁ大丈夫なんですけど全然。だけど、そこもトータスさんに近くて、そこができるとすごくいいんだろうなぁ、って思う時ありますよね。
トータス:それができたら絶対楽やと思う。そりゃあまぁ同一人物やから。
――でも矢沢永吉っていうのは、名前だけれどもある種のバンドというかブランドというか、そういうものになっちゃってると。
トータス:それね、僕らのころは、バンドもそういうものも、さっきのレディオヘッドのトム・ヨークさんにしても、わりとパーソナルな感じ、もうトム・ヨークぅっていう感じが好きな人が多いんだよ。
藤巻:いやぁその憧れが結構僕は大きいですね。
トータス:そうだよね。だけどやっぱり昔の人のほうがそこははっきり分けてるんですよ。絶対。
――これいくつか、みなさんにお配りした資料でも、バンドとソロ両方好きなアーティストっていうのを挙げていただいた。それこそトータスさんなら、RCサクセションと忌野清志郎。
トータス:清志郎さんの場合は、MCで、今日は「みんなに言いたいことがあるんだ。愛し合ってるかーい!」とか言うわけじゃん。そんなの絶対、(本名の)栗原清志が言ってないよね。
藤巻:なるほどね。
トータス:いわば忌野清志郎を演じてるわけよ。「熱いぜベイベー、もう最後の曲になっちゃいましたぁ~」、みたいな。あれ全然、栗原清志じゃないよね。それ言ったら、長渕剛さんとか浜田省吾さんとか桑田佳佑さんとか、僕よりひとつ上の世代の人たち、あのへんもみんなたぶん、はっきりとエンタテインメントやるときの自分と日常生活の自分は分けてるし、桑田さんなんか曲書く時に、サザンオールスターズの桑田佳佑に歌わす曲を、影の桑田佳佑として書いてると思うんですよ僕。だから、清志郎さんに関してはそれに近くて、切り離してる。切り離しきれてないところが僕らファンからしたらキュンとくるねんけど。多分こんな人なんやろうな、って思わせるところが、歌詞の弱いところとかに出て、そこにキュンとしたりすんねんけど。例えばウィーザーのリーバス・クオモとかは、ウィーザーでは結構赤裸々にやってる気がするんやけど、スコット&リバースは遊んでると思うね。
――説明すると、スコット&リバースって日本で活動していて、日本語で曲作っている。それが、ウィーザーっていうアメリカの90年代を代表するロックバンドなわけだけども、確か、日本の女性と……。
トータス:熊本の女性と結婚したんですよね。だから日本びいきなんです、すごい。
――だから、ある種、ソロを実験の場みたいに捉えてるという発想もある。
トータス:そう。遊んでる感じがする。

――藤巻さんは、挙げていただいた中で、バンドとソロ、それぞれ。レディオヘッドとトム・ヨーク、ブラーとデーモン・アルバーン、はっぴいえんどと大瀧詠一。いろいろありますが。
藤巻:どれがいいですかね。同年代にアジアン・カンフー・ジェネレーションっていうバンドがあって、バンドサウンドをどういうふうにポップなメロディで聴かすかみたいなことを、多分すごくその、聴いてきたのが、オアシスとかブラーとかブリットポップみたいなのの全盛期で、オアシスみたいな本当にいいメロディーで、みんなが大合唱できる。そういうのに憧れてそういう曲作りたいなぁ、みたいなのが僕ら世代は結構あって、で、アジカンはまさにそういうのをズバズバズバッとやってく。さっきのウィーザーみたいなニュアンスもあるんですけど、彼が、僕よりちょっと年上なんですけど、僕がソロになったくらいのタイミングでアジカンのゴッチ君もソロ活動されてたんですけど、なんかね、ほんとにやっぱりそれは、彼にとってのアジカンはアジカンサウンドに応えてく、っていうのに徹していて、ソロが、あの人音楽がすごい好きで、なんかいろんなものを持ってきてミクスチャーして、自分が影響を受けたものを全部楽しくソロにしてくんだ、っていう、自分のアジカンバイアスっていうのを全部取って、なんか自分のルーツがあるでしょいろいろ、ルーツをひたすら楽しんで、自分なりにオリジナルにやっていくっていう、なんかこう、おもちゃ箱的なソロで。
――ちょっとかけてみましょうか。アジカンは知ってる人多いと思うので、ゴッチのほうを。「タクシードライバー」って曲が。ゴッチは、インタビューで話聞いたんですけど、ヒップホップにはまったり、アメリカのインディーロックだったり、わりとそういうリアルタイムの影響も。なんかちょっとラップっぽい歌い方が出てきたりとか。そういう意味で、ソロだとバンドのイメージ、期待に応えなきゃ、みたいなのから、その重荷を下ろして自由にできる、ってのは結構あるかもしれない。トータスさんもあったりしますか? 
トータス:バンドはね、自分が、そういう時々の音楽に影響されて、例えば無機質な打ち込んだドラムの中で歌ったことない感じで歌ってみたいなと思って、そういう曲をバンドに持って行っても、全然そうならないんですよ、演奏すると。そこでガッカリするか、逆に嬉しくなるかどっちか。だからバンドやってて、煮詰まるっていう、いい意味でも悪い意味でもブチあたるところってのはそこで。ウルフルズならウルフルズの4人のメンバーがやると、どんな音楽でもそんな感じになる。で、そうじゃなくてさ、って文句言い出すと崩壊するから。
――ぶっちゃけ聞くと、活動休止されて再開してるじゃないですか。休止前っていうのは、そうじゃなくてさぁ、みたいな、どうしてお前らこうやってくれないんだ、みたいな?
トータス:そうそう、で、お前もやんけ! みたいな。みんながそう思ってて、雰囲気めちゃ悪くなる。けどまぁ、運命共同体みたいに若いときからずっとやってきたから、絆っていうと臭い言い方だけど、そういうものもあるから、そこでなんとか繋ぎ止ってるんだけど。
――でも逆に、再開後っていうのは?
トータス:再開するでしょ、いい意味でも悪い意味でも、「ああ、これ! これ! これ!」ってなりました(笑)。
――新しいことやるなら、ここじゃなくてもいいか、みたいな。
トータス:そうそう、実験的なこと、自分がほんとに「これがおもろい!」ってことやりたかったら、バンドに投げつけるよりは自分でやったほうが、そういうふうにはなる。なるけど、いいか悪いかは別なの。自分がすごく好きな感じになったからって、それがいいか悪いかはまったく別の話なんで。
――藤巻さんは、ソロになって、ある種実験とか増えましたか?
藤巻:レミオやってて、たしかに、ラブソングとか、わりとバンドっていいなと思ってるのが、僕ら、って歌えるのがすごくいいなと思ってて。僕らはさ、って、いきなり共感みたいなところから歌詞が書けて、そういうのすごくいいなと思ったんですけど、でもやっぱり、僕らって言ってる中から、「僕は」違うんだけどな、っていうのが溜まり始めて。「僕、今そんな元気ないな」とか。とにかくそういうのがグッーと、「僕は君」が、自分の中の「僕は君」が結構幅きかせてきたときに、これちょっと……、これ「僕は」なんですけど、ってメンバーに持っていくと、これ「僕は」だよね、ってなるんで。
トータス:なる!

藤巻:やさしいから途中までやってくれるんですけど、やっぱちょっと違う……という雰囲気があったりとか。でもやっぱり、もう、溜まってきてるのを吐き出さないのって不健全なんですよ、すごく。だから、この「僕は」は、自分の名前でやってみようかなぁって思って、要は、レミオロメン貯金っていうかね、貯金の中でできたそういうものを吐き出す、一回吐き出させてください、っていうだけだったんですよ、僕は。それでソロ活動1枚目、暗いのができて、で、すっきりして、じゃあ戻ろうかなって思ってたんですね。
――あ、復帰前提だった?
藤巻:一回吐き出したら戻ろう、って、僕自身は思ってたんですけど、まじ一回止まると止まっちゃうんですよね、バンドは。僕はある意味、ソロ活動吐き出したいんですっていう気持ちがあった、自分の好きなことやってね。でも、その間、メンバーもそれぞれ好きなことやり始めた。一人は音楽じゃないことやり始めたりとかして、自分都合のタイミングで戻ろうと思ったんですが、やはりそれぞれのタイミングがなかなか合わない。だから1枚目はすごくスッとできて。吐き出しただけだから。2枚目がすごい大変でしたね。
――そこは腹を括って、ひとりでやるんだ、という感じに?
藤巻:戻る場所が今ないな、って思ってからは、ちょっと腰をすえたところはあったと思いますね。
トータス:両方同時進行でやっていこう、って気はなかったの? どっちかにシフトするしかなかった?
藤巻:だから、ま、これが例えば、これは僕の解釈なんですけど、アジカンのゴッチ君みたいに、アジカンのテイストと自分のやりたいことが違うんだよね、っていうのを使い分けるっていうスタイルだったら、できるかもしれないんですけど、わりと僕もけっこう一緒くたになっちゃうタイプなので。
――たしかに清志郎さんもRCサクセションの曲ソロでがんがん歌いますもんね。そっちに近いわけですよね、藤巻亮太はレミオロメンの曲をがんがん歌うわけで。
藤巻:そうですね、途中からはすごく歌ってますね。使い分けられるようなチャンネルが自分の中にあんまりないような気がしてて。それほどそれも必要ないような気もしてたんで。
――そういう意味では、使い分けるタイプと、清志郎さんみたいに、エンターテインメントとして自分とは切り分けるけども、バンドだろうがソロだろうがキャラは一緒みたいなタイプがあるんでしょうね、たしかに。藤巻さんの場合は後者であったと。
藤巻:そうなんです、それでソロ活動することになったんですけど、ほんとに、どこまでいってもテーマが一緒で、自分ってこういう人間だとか、自分はレミオロメンだからこうじゃなきゃいけないとか、ソロだからこうするべきだとか、結構すぐに枠を作っちゃうタイプなんだなぁと思って。
トータス:決めないとできないタイプなんや。
藤巻:はい。無意識にできてしまうんですけど、それって結構苦しいじゃないですか。自分が狭いほう狭いほうにいっちゃうので。で、毎回ね、狭いほうにいく、例えば自分を縛ってるものをほどくみたいのが、曲作りのテーマになってるような気がするんですよね。ほどいてほどいて、自分が楽になりたいからどんどんほどいてく、みたいなふうに曲を作っていく。

スランプというもの

――ちなみに、学生さんからの質問で、「曲作りと歌詞を書くのってどっちが先ですか?」というのがありますが。
トータス:あぁ、よく聞かれるね。
――人によって全然違うと思いますが。
トータス:違うやろね。
――お二人は?
トータス:えっとね、曲は割とできるんですよ。詞はね、そんなにポンポンできないですね。だから、曲ばっかり作ると後でめちゃ苦しむから、嫌なんですよ。だから曲はなるべく作らない。歌詞の断片が浮かびあがるまでは、メロディを書こうとしない、って決めました僕は。
――メロディは浮かぶけど歌詞がなかなか書けなくて苦労してます、って学生さんもいました。
トータス:みんなね、だいたいキャリア積んできてる人、詞が書けなくなったって言いますね。言葉っていうのは難しいのでね。
藤巻:僕も同じですね。言葉のほうが書けないっていうか、前も同じこと言ってたな、って世界になっちゃうんで。でも、違うマインドで歌ってたらいいんですけど、自分のマインドが変わらないんですよね、多分ね。
トータス:多分そうやと思う。
――スランプというか、苦しんだ時に、こうすると抜けるとか自分なりのテクニックってあったりしますか?
トータス:スランプある? あった?
藤巻:さっき言ったみたいな、1枚目から2枚目にいく時に歌う歌がまったくなくて。それをスランプと言うならば……。全然出てこない、みたいな感じでしたけど。
トータス:スランプっていうのは原因がわからん恐さがあるけど、原因がわからんで曲が書けなくなったことはないかなぁ、まだ。
――原因があって、ってのはあるんですか?
トータス:ある。要するに、俳優になりたくなって、曲かけないとか。はっきり自分の中でモチベーションが下がりきってるわけやから、理由がはっきりしてるから、焦らない。
――これも学生の質問ですが、演じると歌うことって、何かつながってますか? 違いますか?
トータス:これまたさっきのトータス松本と松本敦、「俺はいいけど、矢沢はどうかな」の話になるけど、演じるってのは面白いんですよ。自分がやったことのないことをやるわけやから。それがもし歌の世界で自分ができてれば、トータス:トータス::ってのをこれから先、演じていこうって25歳の時に決めてたら、別に役者の仕事とかに魅力を感じへんかったかもしれんね。次はこんな衣装きてこんなんでやろうぜ、こんな感じで歌おうか、みたいな。全部自分を演じるふうに客観視できるわけやから。
――一生ロングラン公演みたいな。
トータス:そうそう。人生の死ぬまで続くロングラン公演ができたらね。でも俳優の仕事がちょいちょい来るようになって最初嫌やったんやけど、やってるうちに楽しくなったのは、なんか、名前も見たことないやつ、生まれも育ちも全然自分とちがうやつに自分がなりきるわけじゃないですか。それはおもろいよね。自衛隊出身で、ライフル打ちで、オリンピックに出たことがあって、それで、嫁と子供ができて、子供が死んで悲しみにくれて、復讐に出るみたいな。なにその人!みたいな。俺それやんの?みたいな。
――でもやるわけですね(笑)。
トータス:やんのよ。だから、めちゃ考えるのよ、どんな性格なんやろ、どんな小学生やったんやろ、って考えていくわけよ。
――藤巻さんはやったことあります?
藤巻:僕はないですね。
――これひとつきっかけになるかもしれない。
トータス:楽しいよ。だから全部自分で想定して、監督さんに、「こういう感じってどうですかね?」って言ったら、「ちょっと違いますねぇ」とか言われるし、「それいいですね」とか。役が俺の中で育ってきたぞ、とか思って。
――僕もスガ シカオさんから同じようなことを聞いたことがありました。
トータス:でしょ。あいつは同い年なんやけど、わりと、スガ シカオに歌わそうとして曲が、歌詞が書けるタイプ。うらやましいもん。だって、カタカナで〝スガ シカオ〟やからね。漢字じゃないからね(笑)。
――でも、トータス松本ですから(笑)。
トータス:まぁそうね(笑)。ムロツヨシとかね。ユースケ・サンタマリアとかね。

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